
第32回 債権譲渡
投稿日時 2020-05-03 17:42:45 | カテゴリ: 爆撃予想問題
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問1 Aは,Bに対して貸付金債権を有しており,Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。( 平成15年・問8) 1.「貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で,Cが譲渡禁止特約の存在を過失なく知らないとき,BはCに対して債権譲渡が無効であると主張することができない。 」
2.「Bが債権譲渡を承諾しない場合,CがBに対して債権譲渡を通知するだけでは,CはBに対して自分が債権者であることを主張することができない。 」
3.「Aが貸付金債権をDに対しても譲渡し,Cへは確定日付のない証書,Dへは確定日付のある証書によってBに通知した場合で,いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき,Bへの通知の到達の先後にかかわらず,DがCに優先して権利を行使することができる。」
4.「Aが貸付金債権をEに対しても譲渡し,Cへは平成15年10月10日付,Eへは同月9日付のそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合で,いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき,Bへの通知の到達の先後にかかわらず,EがCに優先して権利を行使することができる。 」
1.【正解:○】◆債権譲渡禁止の特約に反したときの善意無重過失の第三者 債権譲渡 A(譲渡人)――――――→C(譲受人) 善意無過失 | |貸付金債権 |譲渡禁止の特約 B(債務者) 指名債権は原則として自由に譲渡できますが,債務の性質上譲渡を許さないもの(466条1項但書)や法律上譲渡が禁止されているもの(881条など),当事者間の特約で禁止されている場合(466条2項)には,債権譲渡することはできません。 債権譲渡禁止の特約に違反して,債権者が債権を譲渡した場合は,原則として,その債権譲渡は無効になります。(最高裁・昭和49.4.26) ただし,譲渡禁止の特約について,譲受人が善意であり,かつ,重過失でなければ,譲受人は有効に債権を取得します。(民法466条2項,最高裁・昭和48.7.19) 本肢では,譲受人Cが善意無過失なので,Cは有効に債権を取得し,BはCに対して債権譲渡が無効であると主張することはできません。 判例 譲渡禁止特約があっても第三者が善意無重過失ならば,取引の安全を図るためその第三者は保護される。〔無過失は不要。〕(最高裁・昭和48.7.19) ▼将来発生する債権でも,発生原因や金額,期間などで特定しているならば,債権譲渡することができます。(最高裁・平成11.1.29)
2.【正解:○】◆債務者への対抗要件 債権譲渡 A(譲渡人)――――――→C(譲受人) | |貸付金債権 | B(債務者) 債権の譲受人Cから債権譲渡の通知がきても,債務者Bはそれだけでは真偽の確認のしようがないので,民法では,債権譲渡の通知は債権の譲渡人Aからの通知に限定しました。債権譲渡により不利を蒙る者からの通知ならば信用できるだろうという趣旨です。(467条1項) ●債権譲渡の債務者への対抗要件 債務者が 譲渡人 or 譲受人に承諾 譲渡人からの債務者への通知
3.【正解:○】◆債権の二重譲渡の優劣−確定日付はあるか ┌ C Bへの通知は 確定日付のない証書 A―┤ | └ D Bへの通知は 確定日付のある証書 |貸付金債権 | B AのBに対する指名債権がCとDに二重に譲渡され,確定日付のある証書による通知が一方のみの場合は,確定日付のある証書による通知が優先され,たとえ確定日付のない証書による通知が先にBに到達したとしても,本肢ではDが債権の譲受人としてBの債権者になります。(467条2項,大審院・大正8.3.28)
4.【正解:×】◆債権の二重譲渡の優劣−到達したのはどちらが先か ┌ C Bへの通知は 確定日付のない証書 平成15年10月10日作成 A―┤ | └ E Bへの通知は 確定日付のある証書 平成15年10月9日作成 |貸付金債権 | B ●債権の二重譲渡の優劣 ┌ 確定日付のある証書… 到達した日時の先後 債権の二重譲渡―┤ └ 承諾の前後 証書の確定日付 (証書の作成の日付) E C ―――●―――●―――→ 時間軸 確定日付はEのほうが早いが、この先後では決まらない。 債権が二重に譲渡され,二人の譲受人がともに,確定日付のある証書 による通知 or 承諾を得ている場合,「通知が到達した日 or 承諾の日時」 の先後によって,優劣が決まります。(最高裁・昭和49.3.7) ■指名債権 証券的な債権〔指図債権・無記名債権〕に対する用語で,証券的な債権以外の一般の債権のことを言います。債権とは原則的に特定人を債権者とするものですが,証券化されず流通されることを予定していない債権のことを『指名債権』と言っています。
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